恋涙

高速の降り口まで来て、そこがなんとなく見覚えのある風景だということに気付いた。


2ヶ月くらい前にデートで来た海の近くだ。


その海を丸ごと包んでしまうような空がすごく綺麗で、いつものデート以上にはしゃいだのを覚えてる。


「もしかして、海?」


私は運転する彼の顔を覗き込むように見た。


「正解!あそこの空、好きだったろ?」


「好き!」


急にテンションが上がった私を見て、久保さんは笑った。



「なぁ、そういえば・・・どうして空が好きなんだ?」


赤信号で車が止まり、久保さんはホルダーに入っていたお茶を一口飲んだ。


久保さんの質問に少し困った。


空を見る理由が私には二つあったから。


おじいちゃんの遺言と、結稀の遺言。


私はおじいちゃんの方を選んだ。


「亡くなったおじいちゃんが昔よく言ってたの。辛くなったら空を見なさい、その時は必ず青空にするよって。」


私は車の窓から空を見た。


「偉大だね、おじいちゃん。」


久保さんがまた優しい顔をした。


「うん。おじいちゃんは空を見ようとすると必ず上を向かなきゃいけないから好きなんだって。」

「俺も空が好きになったよ。」


「どうして?」


「世界の端と端の人間でも、空だけは繋がってるしね。」


久保さんのこういうところが好き。


私の大切なモノを大切にしてくれる。


それがどんなモノでも、笑わずに守ってくれるんだ。


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