恋涙

気がつくと、2ヶ月前にはしゃいだ海に着いていた。

車を降りると真っ青な空が広がっていた。


そういえばあのデートな時に転勤の話題になって、「しがないサラリーマンだから転勤あるよ。」ってサラッと言われて落ち込んだっけ。


あの頃に戻りたい・・・

そう思うと海を見て悲しくなった。


「旅行行こうか。」


泣きそうになる私を見て、久保さんは車のキーをポケットにしまいながら言った。



「えっ!行けるの?」


「頑張って二日間の休みを取るよ。大場にでも頼むかぁ!」


「大場くんがだめって言ったら?」


「その時は仮病でもなんでも使うさ。」


久保さんは海辺を歩きながら海の近くの旅館がいい、なんて話してた。


きっと私に気を遣って旅行に行こうなんて言ったんだ。


それが分かるから、切ない気持ちと嬉しい気持ちが交互した。



少し先を歩く久保さんを走って追いかけて、後ろから抱きついた。


久保さんは私の手を掴むと自分の体から話して、私に足技をかけた。


バランスを崩した私は砂浜の上に倒れ込んだ。


「ひどーい!」


「あはは・・・ごめんごめん・・ほら。」


久保さんが差し伸べた手を私は思いっきり引っ張った。


思いがけない私の行動に、久保さんも砂浜に倒れ込んだ。



「やられたー!これでもくらえっ!」


久保さんと私は服が汚れるのも気にしないで、お互いの体を上にしたり下にしたりしながら回転して数メートル進んだ。


幸せな時間だった。
< 318 / 366 >

この作品をシェア

pagetop