恋涙
気がつくと、2ヶ月前にはしゃいだ海に着いていた。
車を降りると真っ青な空が広がっていた。
そういえばあのデートな時に転勤の話題になって、「しがないサラリーマンだから転勤あるよ。」ってサラッと言われて落ち込んだっけ。
あの頃に戻りたい・・・
そう思うと海を見て悲しくなった。
「旅行行こうか。」
泣きそうになる私を見て、久保さんは車のキーをポケットにしまいながら言った。
「えっ!行けるの?」
「頑張って二日間の休みを取るよ。大場にでも頼むかぁ!」
「大場くんがだめって言ったら?」
「その時は仮病でもなんでも使うさ。」
久保さんは海辺を歩きながら海の近くの旅館がいい、なんて話してた。
きっと私に気を遣って旅行に行こうなんて言ったんだ。
それが分かるから、切ない気持ちと嬉しい気持ちが交互した。
少し先を歩く久保さんを走って追いかけて、後ろから抱きついた。
久保さんは私の手を掴むと自分の体から話して、私に足技をかけた。
バランスを崩した私は砂浜の上に倒れ込んだ。
「ひどーい!」
「あはは・・・ごめんごめん・・ほら。」
久保さんが差し伸べた手を私は思いっきり引っ張った。
思いがけない私の行動に、久保さんも砂浜に倒れ込んだ。
「やられたー!これでもくらえっ!」
久保さんと私は服が汚れるのも気にしないで、お互いの体を上にしたり下にしたりしながら回転して数メートル進んだ。
幸せな時間だった。