恋涙

「もしかして新婚さんですか?」


40代くらいの仲居さんはお茶を入れながら私たちに話しかけた。


そっか・・・そう見えるんだ。

何も知らない人が見たら、私たちがもうすぐ離れ離れになることなんて想像つかないんだよね。


本当に幸せなカップル、夫婦。そう見えるよね。




「えぇ。そうなんです。」


私が考えている間に久保さんはそう返事をした。

私が驚いて久保さんを見ると、またあの笑顔で私を見てた。


「いいですねぇ。今が一番楽しいでしょう?失礼ですけどおいくつですか?」


やっぱり傍から見ると年齢差があるように見えるんだろう。


「私が37で、妻が21です。」


久保さんの、「妻」という言葉がすごくうれしかった。


「あら、少し離れていらっしゃるのかと思いましたけど、そんなに離れていたんですね。お若い奥さまで旦那さんもお幸せでしょう。」



「まぁそうですね・・・でも妻にはもったいないでしょう?(笑)」



久保さんはそんな冗談を言えるほどの余裕がある。


私なんて初めての旅行でこんなにドキドキしてるのに。



こういうところが自分はいつも子供だなって思う。


いつも二、三歩は彼の後ろを歩いてる。


隣を歩きたくて必死なのに、そんな私をいつも見て笑ってるんだ。





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