恋涙
部屋に戻ると、すでに布団が敷かれてあった。
久保さんは飲み疲れて布団の上に横たわった。
「うー飲んだ・・・。」
「私、お風呂行ってくるね。」
「うん・・・」
私は家族風呂と違う階にあるお風呂に向かった。
大きな窓から海が見えるようになっていて、露天風呂はさっきの家族風呂より少し小さいような気がした。
髪と体を洗って、私はまっすぐに露天風呂に向かった。
誰もいなかったから。
真っ暗な外を見ると、海の中にある大きな岩が美しくライトアップされていた。
広い海を見ながら、いろんなことを考えた。
これからのこと、これまでのこと・・・
考えれば考えるほど、自分がどれだけ久保さんのことが好きなのか分かった。
今日みたいな日があると、これが本当に最後なんだって思っちゃう。
離れたらいつかお互いのことを忘れて、私も久保さんがいなくても平気な毎日が来るのかもしれない。
そう思うと少し怖かった。
遠距離恋愛をする勇気もなかった。
やっぱりお互いの年齢の差もあるし、久保さんも仕事でなかなか連絡できない、そして会えない、いつ帰ってくるかも分からない・・・
そんな状態で遠距離をするくらいなら、お互いを縛りつけないために一切連絡しない、そういう結論を私たちはしていた。
・・・というか、久保さんがそうしたいと私に言った。
待ってもらっても迎えにいけなかった時が辛い、若い私にはもっと身近な恋愛を楽しんでほしいと言った。
私の答えはいつだって「yes」しかない。
あなたがそうしたいというのなら、それを叶えてあげたい。
それが愛だと思うから・・・
でもね、笑顔でいても私も辛いんだよ。
海を照らす月を見ながら私は涙を流した。