恋涙

朝食を終えた私たちは、荷物をまとめてチェックアウトをした。


ロビーの大きな窓ガラスから綺麗な青空と海が見える。


きっとこれが最初で最後の旅行だな・・・


そんなことを考えながら空を見てると、チェックアウトを終えた久保さんが戻ってきた。


「今日は天気がいいから最高のドライブ日和だね。」


「うん。」


「どこ行きたい?」


「うーん・・・」


「よし、じゃあ空を見に行こう!」


私は「見上げれば空はあるよ。」と、笑った。



車に乗ると、いつもはカーナビを設定する久保さんがナビを使おうとしなかった。


「ナビなしで行けるの?」


「目的がないのにナビを設定できないよ。」


その理由が私には分からなかった。


正直、今でもよくわからない。


「思うままに行って、着いた先が目的地。」


そんなことを言うんだ。



二時間近く走ったところで、久保さんは車を止めた。


それは少し小高い山の道。


山々に囲まれてその隙間から空が見える。


車を停めるところがあるということは、絶景ポイントの一つとして地元では有名なんだろう。



車を降りると気持ちいい残暑の風が優しく吹いていた。





< 332 / 366 >

この作品をシェア

pagetop