恋涙
朝食を終えた私たちは、荷物をまとめてチェックアウトをした。
ロビーの大きな窓ガラスから綺麗な青空と海が見える。
きっとこれが最初で最後の旅行だな・・・
そんなことを考えながら空を見てると、チェックアウトを終えた久保さんが戻ってきた。
「今日は天気がいいから最高のドライブ日和だね。」
「うん。」
「どこ行きたい?」
「うーん・・・」
「よし、じゃあ空を見に行こう!」
私は「見上げれば空はあるよ。」と、笑った。
車に乗ると、いつもはカーナビを設定する久保さんがナビを使おうとしなかった。
「ナビなしで行けるの?」
「目的がないのにナビを設定できないよ。」
その理由が私には分からなかった。
正直、今でもよくわからない。
「思うままに行って、着いた先が目的地。」
そんなことを言うんだ。
二時間近く走ったところで、久保さんは車を止めた。
それは少し小高い山の道。
山々に囲まれてその隙間から空が見える。
車を停めるところがあるということは、絶景ポイントの一つとして地元では有名なんだろう。
車を降りると気持ちいい残暑の風が優しく吹いていた。