恋涙
「すごい、綺麗・・・」
私は手すりから身を乗り出して空を見た。
下は崖になってる。
周りの山々が近いはずなのに遠くに見えて、空が大きく見える。
私はケータイを取り出してその空を撮った。
「この空、待ち受けにする。」
私はその場でその写真をケータイの待ち受け画面に設定した。
「これでいつでもこの空を覚えていられる。」
私は後ろにいる久保さんに笑いかけた。
久保さんも笑顔だった。
「久保さんの顔も覚えていたいから、何度も一人の時に頭の中で思い出す練習したんだよ・・。」
私の隣に来た久保さんの顔を触って、私はそう言った。
この顔を私はいつまで覚えていられるんだろう。
いつかきっと彼を忘れて、彼がいなくても平気な日常が来るのかもしれない。
私の言葉に久保さんは何も返す言葉がないようだった。
切なそうな顔で私の手を握った。
そして私を強く抱きしめた。
「ねぇ、思い出せなくなったらどうしたらいい?」
そんなこと言えば久保さんが困るの分かってるのに、言葉になってしまう。
久保さんの腕の中はあったかかった。
「その時は・・・空を見れば思い出せるよ・・・きっとこんな綺麗な空を二人で見たんだから、君は空を見るたびに俺のことを思い出す。」
「わかった・・思い出したいときは空を見る。」
だから今でも空を見ると、彼のことを思い出してしまうんだ。