恋涙

一緒に


旅行以来、彼と離れたくない気持ちはもっともっと強くなった。




大学の夏休みが終わる少し前の日のことだった。


その日は母親が夜勤明けということもあって、昼間は実家で過ごしてた。


夕方くらいになってそろそろ買い物をしてアパートに戻ろうとしたときに久保さんから電話が入った。


会社の飲み会が入ったらしく、帰りが遅くなるっていう用件。


先に寝てていい、と言われて、そんなに遅くなるのかって思った。



きっと接待ではないから、久しぶりにハメをはずしてくるんだろう。


私は実家でごはんを食べて、22時過ぎにアパートに戻った。


もちろんまだ彼は帰っていなくて、私は玄関を開けて部屋の電気をつけた。



「まだ帰ってこないのか・・・。」


待っていようかとも思ったけど、何時になるかわからないから私は先に寝ることにした。



多分、日付が変わったころ・・眠りについていた私は玄関が開く音で目が覚めた。



久保さんが帰ってきたことが分かったけど、私はベッドから起きようとしなかった。


なんでかな、「おかえり」って言いたいけど・・・なんだか言えなかった。



スーツを掛けるために彼が寝室に入ってくるのがわかった。


クローゼットを開けて、ハンガーに上着をかけている。


その音が寝室に響いて、なぜか心を締め付ける。


ハンガーにスーツの上着を掛けた彼が、今度はネクタイを解く音も聞こえる。


・・・いや、解きながらベッドに近づいてくるのがわかる。


彼はベッドに腰掛けて、ネクタイを取った。


その時彼がどんな顔をしているのかはわからないけど、私の顔をじっと見ているのはわかった。


視線が強すぎて、寝た振りをすることしかできなかった。






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