恋涙

「なにも異常なかった。ただの疲れだって。」

私は彼の昼休みを狙って、電話でそう報告した。


「まぁ何もなくてよかったよ。今日は夕飯どこかに食べに行こう。作るの大変だろうし、俺が帰るまで寝てろ。」


「うん、わかった。」


彼は私の言葉をすんなり信じた。

だからこそ余計に罪悪感があった。


別れなきゃいけない。

今彼について海外へ行っても、確実に彼を苦しめる。


もしかしたら彼を苦しめて苦しめて先に死んでしまうのかもしれない。


置いていかれる辛さは自分が一番よく知っているから、同じ思いを彼にさせたくない。


だから別れることを決めた。


お荷物として彼についていきたくなかったから。



電話を切って、堪えてた涙が一気にあふれ出した。


諦めるしかない。

別れるしかない。


答えなんて出ているのに、欲深いんだ。


人は誰かを愛した分だけ、別れを受け入れるのに時間を必要とする。



病気のことを、彼に話そうとは思わなかった。


今でも話さなかったことに後悔はしていない。


今はもう、自分が選んだ道でどう後悔しないように生きるか、ずっと考えながら生きてる気がするんだ。
















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