恋涙

猶予


「ねぇ。」


私は久保さんの方を振り返った。


久保さんは優しい笑顔で見ていた。


「この一ヶ月間幸せだった。約束を守ってくれてありがとう。」


私の言葉に久保さんの顔から笑顔はなくなって、私が何か大切な話をするんだろうと気付いたかのように真剣な顔をしていた。



「あなたに会って毎日が楽しかった。仕事をしているときのあなたも、二人で一緒にいるときのあなたも、全てが大好き。私にはあなたと過ごした優しい思い出がたくさんある。これからはその思い出で私は強く生きていける。」


久保さんの顔が今度は切なそうな顔に変わっていくのがわかった。


「だから・・・行って。」


そう言った瞬間、久保さんは私の腕を引っ張って抱きしめた。


「ごめん・・ついては行けない・・。」


病気を抱えて彼のそばにはいられない。

心配させてまで彼と一緒にはいられない。


久保さんはただ頷くだけだった。


そして一言、「幸せになってくれ。」とだけ言った。




その時、心の中で誓った。


幸せになる・・と。


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