恋涙

「どうかしたの?」


電話を切った私に友達が問いかけた。


「んー・・なんか久保さん体調悪くて会社早退したみたい。朝から少し体調悪かったんだ。」



結局そのあとの検査で久保さんはインフルエンザに罹っていることが分かった。


めずらしく風邪を引いて動揺でもしてるのか、大学にいる間に何度も彼から電話がかかってきた。


「何時に帰るの?」とか、「飲み物かってきて。」とか、「体温計どこ?」とか。


五回目くらいの電話で思いっきり怒った。


「いい加減にして!」って。



でも、講義の間もずっと心配で仕方なかった。



講義が終わって私は買い物をしてからアパートに帰った。


「ただいまー。」


玄関を開けると、部屋の中が異様に静かだった。


リビングのドアを開けても彼の姿はなく、寝室をそっと覗くとおとなしくベッドで寝ていた。


私は物音をたてないようにベッドに近づき、そっと彼の額に手をあてた。


思ったよりもかなり熱い。


少し冷やした方がいいかな、と思い、私はその場から離れようとしたとき、寝ていたはずの久保さんが私の腕をつかんだ。


「おかえり。」


私の顔を見て、笑った。


「ただいま。具合どう?」


「死にそう。」


「なに言ってんの。今冷やすもの何か持ってくるから。」


「行くなよ。」


もう一度彼が私の腕をつかんだ。





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