恋涙
車で約一時間半。


初デートの公園が見えてきた。


「なんか雰囲気が違うね。」


「初めて来たときは春だったからね。」



車を駐車場に停めて降りると、そこは半年前とは違う光景が広がっていた。


「こうやって季節も変わるんだね。あのときはここにピンクのチューリップが咲いてたよ。」


私が花壇を指差した。


「そうだね。でも、今は違う花が咲いてるよ。」


チューリップが咲いていた花壇には、見たことのない黄色の小さな花が咲いていた。


冬がもうすぐ来るのに強く、そして優しく咲いていた。



少し歩いて湖まで来ると、その湖面の色も半年前とは違うような気がした。


「明後日だね。出発。」


最後のデートの時くらい、そんな話をしなきゃいいのにって思っても口に出さないと落ち着かない自分がいるんだ。


「寂しい?」


久保さんはわざと冗談のように返してきた。


私はその言葉に反応しなかった。



「君は後悔しなかった?この一ヶ月間・・・いや、交際を始めたこと自体に。」


湖を真っ直ぐ見ながら久保さんは私に質問した。


「どうして?」


「俺が君なら、年の差の問題を捨てて交際する決断をしたのに、結果置いていかれるなんて絶対後悔してしまうから。」



「それは辛い思いするなら久保さんと付き合わなければよかったって私が思ってるかってこと?」


「そう。」





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