恋涙

「正直・・・全く後悔がないって言ったら嘘にはなるかも。」


私も久保さんの方は見ずに、湖を真っ直ぐ見ながら答えた。


その答えに久保さんは少しうつむいて小さなため息をついた。


「でもね、何度あの時に戻ってもやっぱり同じ選択をすると思う。」


今度は久保さんのほうに体を向けてそう言うと、久保さんも私の方を向いた。



「好きになるよ。きっと何度でも。」


私は久保さんに笑いかけた。


久保さんは私の右腕を掴むと、ゆっくり抱きしめた。


「絶対、戻ってくるから。」


「うん・・」


いつも思う。


この腕の中は心地いい。


いつまでも彼のそばでこうしていたいって何度思ったんだろう。



本当の本当は別れるなんて嫌だって、声を出して泣きたい。


どんなことをしても彼と一緒にいたい。


それができない自分さえも恨んだ。


二日後には彼は海外に行ってしまう。


一人になった時、彼の顔を思い出せるように何度も何度も練習したのに、目を閉じて彼の顔を思い出そうとすると思い出せない。


辛くて辛くて、大好きだった笑顔さえも思い出すことができない。


このまま離れて、私はずっと彼が戻ってくるまで彼を想い続けていることができるのだろうか。



彼と過ごした日々を、心の中で覚えておくことができるのだろうか。



そんな自信なんて到底なかった。


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