恋涙
五章
恋敵
樹里は私の姿に気づくと、少しだけ微笑んだ。
その姿を見なかったら、あの時私は引き返していたかもしれない。
私も少しだけ笑って樹里の近くまで駆け寄った。
「久し振りだね、おじいちゃんが亡くなったって聞いたから宮城に帰っちゃったのかと思って。」
「まだいたんだよ(笑)」
「あのね、絢香に謝ろうと思って・・・。」
「何を?」
「結稀くんのこと。絢香が何も悪くないのに。」
「ううん、私もはっきり言わなかったのが悪いから。ごめんね。鈍くて。」
樹里との和解は本当に嬉しかった。
一番手ごわい恋敵。
でも、一番仲の良い恋敵。
「私ね、本当は知ってたんだ。」
「何を?」
「結稀くんがずっと小さい頃から絢香のことしか見てなかったのを。」