恋涙

辺りはすでに真っ暗になっていた。



川辺に来る人も多くなって、みんな花火が上がるのを楽しみに待っているようだった。





このお祭りの花火は私たちの夏の終わりを告げる。




毎年、宮城に帰る直前にお祭りがあるから。




きっと二人ともそのことを考えていたから交わす言葉も少なかった。





「今年の夏はなんかいろいろあったね。」




色んな事を回顧するように私は夜空を見上げた。




「俺たちの時間はあんまりなかったな。」




「そうだね。」




「なぁ、絢香の夢って何?」



「なんで?」



「聞いたことなかったから。」



「じゃあ、結稀の夢って何?」



「俺?俺は・・小学校の先生になりたい。」



「医者じゃなくて?」




結稀の家系は代々医者が多かった。



柚也兄ちゃんも、今では立派な医者だ。
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