恋涙
秋人に呼び出された日の夕方。
夕食の前にタローの散歩に行こうとリードを手に出かけた。
いつものように川辺で考え事をしようと思っていた。
駅前を通り、まっすぐのびる川辺を歩く。
考え事をしながら歩いていると、少し先に人影が見える。
それは結稀だった。
川岸にちょこんとあぐらをかいて、首に手をあてている。
これは彼の癖。
何か考え事をしてるときに必ず首に片手を回すんだ。
私は話しかけることも出来ずに、ただ遠くから彼の姿を見つめていた。
今思えば、気づいてほしかったのかもしれない。
やっぱり怖かったから。
幼なじみとして喧嘩するのと、恋人として喧嘩するのは違う。
嫌われるのが怖かったから、あの日の私はあなたを遠くから見つめていることしか出来ませんでした。