恋涙
声をかけずに帰ろうと思った。
勇気がなかったから。
だけど、このままでいいわけがない。
そう思ったんだ。
「結稀!」
本当に大声を出さなきゃ聞こえないくらいの距離から、私は彼の名前を呼んだ。
結稀は驚いた顔で立ち上がる。
「なんでいるんだよ!」
結稀も大声で返事をする。
私はその先の言葉が見つからなかった。
結稀は一瞬川の向こう岸に目をやると、私のところに走ってきた。
目の前まで来ると、結稀は一息ついて少しだけ遠くを見ながら話し始めた。