恋涙
2002年、春。
結稀は高校一年生に、私は中学二年生になった。
結稀は高校では部活より勉強を優先したいからと言って、部には所属しなかった。
この頃、結稀は小学校の教師になるか、医者になるか、ずいぶん迷っていたようだった。
本人は小学校の先生になりたくても、彼の父親の希望は断固として医者だったから。
でも、私は彼の夢をあきらめてほしくないと言った。
この頃から、私は地域でピアノの演奏をするボランティアのようなものを引き受けるようになっていた。
時には子供たちの合唱の伴奏をしたり、ソロ活動をしたり。
そのうちスケジュールを管理してくれるマネージャーまで出来た。
そんな活動をしているうちに私は将来、ピアニストになりたいと思うようになった。
まぁ、それは夢のまた夢だったけど。
その頃はただ「好き」っていうだけで何でも出来そうな気がしてたんだ。