恋涙
「三歳からです。」
私はこの人はなんなんだ、と少し思った。
「君は中学を卒業したらどうするの?」
「えっ・・普通に高校に進学すると思いますけど。」
ただの変態かと思った。
「もし、君が本当にピアノが好きなら中学を卒業したらウィーンに留学してみないか?僕が推薦状を書いてあげる。」
そんな甘い話があるか、そう思った。
しかし、後からマネージャーにその男性がウィーンの音楽学校を出たすごい人だと聞いて本当に驚いた。
「私にはそんな技量は全くないですけど。」
「確かに、技量はまだまだだ。ただ普通の人よりはちょっと上手いって感じだ。だけど、君の演奏には何か普通の人には表現できない心がある。ピアノに表情があるんだよ。」
「はぁ・・・。」
「だから、もし君が本気でピアニストを目指す気があるなら僕にプロデュースさせてほしいんだよ。とにかく留学の件、考えておいてね。」
そう言って、その男性は自分の名刺をマネージャーに渡していった。