teacher's paradise 。
無事一日が終了し、あっという間にチャイムが鳴り放課後になった。
リコ-ダ-を教えてもらおうと、帰りがけに音楽室へ立ち寄った。
音楽室からはピアノの音が鳴り響いてきて、すぐ先生がいると確証した。
ガラッ-…
「あ、保稀さん」
ピアノが鳴りやみ、こちらを向く先生。
「リコ-ダ-、教えてもらいたくて来ちゃいました」
本当は、先生に会いたくて、先生のあの笑顔をもう一度見たくて来た。
「いいよ-、そこに座って?」
手の平で席を指定すると、先生も私の席の近くに座った。
「あ、そう言えば教科書ないんだよね」
うっかりしていたが、教科書を忘れていたことに改めて気づいた。
「そうでした(笑)」
私が笑うと、先生も笑う。
この幸せな一時が、一分一秒長く続いてくれればいいのにな。
心の底から思った。
「僕、保稀さんにまだ名前教えてなかったよね?」
確かに、言われてみれば知らなかった。
「枝野 祐と言います。皆には、"枝ちゃん"とか"枝"とか"枝っち"って呼ばれてる(笑)」
はははっと笑う枝野先生。