「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「何があったのかは知らねえが…。
風太が好きなんだろ?」
「…………」
「愛がお望みならいつでも抱いてやる。
だけど…辛いのは愛だろ?」
「…………」
愛は俺の言葉に一度、コクンと頷く。
それから、両手で顔を覆って声を上げて泣いていた。
子供みたく、がむしゃらに。
愛は泣き続けた。
暫く、俺は落ち着くまで抱き締める。
愛はやっと涙が止まったのか、俺の「大丈夫か」の問いに首を縦に振った。
「千里…」
「何」
「話、聞いて」
「ここまで泣かれて、聞かないわけにもいかないだろ」
俺がそう言うと、愛は赤い目を細めてクスクスと笑った。
「確かに」
「…ゆっくりでいいから話せよ」
「うん、だけど、その前に」
愛は再度、顔を手で拭うと俺の背中に腕を回して、思い切り抱きついてきた。
訳が分からずいると、愛はそれにもクスクスと笑う。
「…あったかい」
「………」
「人の体温って…こんなに温かかったんだね」
「………」
俺に抱きついたまま、愛はぽつりぽつりと話し出す。