「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「私ね、さっきも言ったけどね。お金持ちなの。
昔から、忙しくて両親は私に構ってくれなかった。
お金だけもらって。好きなモノ買えって、おもちゃだけもらえて。
だから、友達よりもたくさんのおもちゃを持ってたの」


愛は幼い頃の思い出を、淡々と俺に教えてくれた。


「そのおもちゃを友達にあげたら、友達がたくさん出来たんだ。
でもね、陰で“おもちゃをくれる使える奴”って言ってたのを聞いて。
それから、おもちゃをあげなくなったの」

「……」

「中学生になって、オシャレが好きになって。
美容にお金をかけるようになったら、自然と男の子に告白されたの。
たくさんの人と付き合った。だけど、誰も私の中身は見てくれなかった」


愛は苦しそうに顔を歪めながら話す。
それに俺は言葉も出さず、耳を傾ける。


「付き合って、別れてを繰り返して行く内に、好きなのかどうかがわからなくなった」

「………」

「千里?好き、って何だろうね」

「………」


俺は愛の問いに。
残念ながら、眉を情けなく下げて微笑むしか出来ない。

実際、一番わかっていないのは俺なのだから。
< 110 / 302 >

この作品をシェア

pagetop