「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
そんな俺を責める事もなく、愛も同じ様に薄く笑うと続けた。


「風太はね。幼馴染で、支配人の子供なの。
昔からよく遊んでて。
でも、こっちはお得意様。あっちは提供する側でしょ?
何か私にしちゃったらって、引き離されるようになった」


自由に友達を選ぶ事も出来ず。
自由に恋愛をする事も出来ず。
好きな人と会話をする事も出来ず。

……ただ、その手にあるのは“自由”に使えるお金のみ。


「私、ここによく泊まりに来てたのは…風太に会いたかったからなんだ。
だけどね、風太には彼女がいるの」

「………彼女?」

「そう、彼女。私のお姉ちゃん」

「…!!!」

「今時、政略結婚だなんて流行らないよね。
それ、聞いて…風太に言った事あんの。
私の事好き?って」

「………」

「……風太は…好きだって」


愛は俺の胸に顔を埋めると、ぎゅっと背中に回した手に力を入れる。


…愛は。
こんなにも儚い恋愛をして来たのか。


薄っぺらい恋愛をして、やっと好きだと思える人に出会えたのに。
その人は、自分の姉と結婚。
……なのに。
相手は愛を好きだなんて。
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