「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「…嘘…つきだよね」

「……そうだな」

「だからね、千里を見せびらかしてやろうと思って。
今日、ここに来たんだ」


顔を少し胸から離すと、俺の顔を見てにこっと笑う。


「利用してごめんね」


上げた口角はみるみる内に下がっていき、瞳からはまた大粒の涙が零れ落ちた。


そんな愛を今度は俺が強く抱き締める。


「……利用したいなら…したいだけしろ。
俺はレンタル彼氏だ。
今、愛の為だけにいる」

「ちさ、…と」

「気が紛れるなら…何度だって抱いてやる。
それで、愛の気が済むのなら」

「………ち…さと…」


そのまま、ゆっくりと愛をベッドへと押し倒す。
倒れた時にポスンと音がして、愛は涙を目に溜めながら俺を見上げた。

嗚咽を漏らさない様に、口許に当てていた手を俺の首元へとゆっくり伸ばす。



「…抱いて、千里で、私をいっぱいにして」

「………愛」


俺は何か話そうとする、愛の口に強引に自分の唇を重ねて言葉を封じた。
もう、言葉なんて、いらない。
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