「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
おふくろは。
俺が文句を言っても。

いつも、ごめんねの言葉のみだった。


それが、苦しかった。


「大丈夫、千里は愛されてるよ」


俯く俺に、くるみはそう声をかけた。
それに、ふっと顔を上げる。

その顔は。
笑顔のはずなのに、どうしてだか、辛そうに見えた。


「…くるみは、愛されてないの?」


だから、そう俺が尋ねたのは至極当然だと思う。
くるみは俺の問いに答える事はなく、ただ微かに微笑んだ。


そこに、タイミングを計った様に料理が運ばれてきて、くるみは料理に夢中になってしまい答えは聞けなかった。

再度、その質問を出来るわけもなく、俺も運ばれてきた料理に箸をつけた。


その後もくるみは他愛ない話をして、俺に色々話しかけた。
俺はほぼ、うん、とか、ああとかだったけど。

それでも、くるみは嬉しそうに話しかけた。
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