「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「送ろうか?」

「は?普通、男が送るもんだろ」

「だって、私のが年上だし」

「関係ねえって」

「そう?」

「いらねえから、くるみは帰れ」

「ぶー。わかったー」


送れなかったのが不満だったのか、それとも送ってもらえなかったのが不満だったのかはわからないが。
不貞腐れながらそう言うと、くるみは俺を見つめる。

それから、はっきりとした口調で俺に尋ねた。


「ちゃんと帰る?」


ああ。
そうか。

俺、家出しようとしてたんだもんな。



「帰る」

そうくるみを見ながら答えると、くるみは静かに口角を上げた。


「じゃあ、私帰るね」

「わかった」

「絶対、連絡してね」

「わかった」

「それじゃ」


くるみはそっと、手を上げるとヒールを鳴らして去って行った。
その後ろ姿を見守る。


なんて、不思議な女。
初めてあんな女に会った。


俺は少し笑みを零すと、踵を返して帰路についた。
おふくろには何て言われるだろうか。

わからない。
また、反抗してしまうかもしれない。


だけど、何故か大丈夫だと思った。
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