「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
俺が座ったのを確認してから、くるみは俺の顔を覗きこむ。
そして、

「千里、暫く電話くれなかったけど、何かあった?」

探るように、窺うように尋ねた。


「何も」

「嘘だ。絶対なんかあったでしょ」

「あっても関係ない」

「…まあ、そうなんだけどね」


眉を下げて、少し俯くと寂しそうにくるみは呟く。
それにズキンと胸が痛む。

何の痛みだろうか。
良心?


「でもさ、一人で抱え込んでも…苦しいだけだからね?」

「……誰かに言っても、苦しいモノは苦しいよ」


それは、今の気持ちを紛らわそうとしてるだけ。
きっと、話しても。

一人になったら。

絶対に苦しくなるから。


俺はそんな同情が欲しいわけでもない。
頑張ったなんて労いの言葉が欲しいわけでもない。
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