「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
すぐにお寿司は運ばれて来て、慣れた手つきでくるみはお皿を取ると俺に出した。


「さーたくさん食べよう」

「……」

それから、くるみはテキパキと母親の様に手際よく注文をしてくれたり、かといってそれに夢中になるのでなく、話題を振ってきたり。
とにかく、気が回ると思った。


ある程度食べて、くるみも俺も満腹になってお茶をすすった時だった。
コトンと湯呑をテーブルに置くと、くるみは俺を見る。


「千里」

「ん?」

真面目な顔をしているくるみへと視線をやる。


「なんか…あったら私の事、すぐ呼んでいいからね」

「何だよ、それ」

「千里が辛い、苦しいって思った時」

「……」

「ね?」


優しく、問いかけるくるみの言葉にゆっくりと頷く。

辛いと思った時に、くるみに…いや、誰かに連絡するだなんて。
そんな事、きっとしないと思うけど。


強制的に頷いたわけじゃない。
くるみといると、俺は普段しない様な事を考えたり、自然と行動している。

それが、くるみの持っている何かの所為だとはわかっていた。
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