「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

「…吏紀」


様子がおかし過ぎる吏紀に、俺は何も声をかける事が出来ずにいた。
何度も扉が腕に当たっては閉じてを繰り返すけど、茫然とまた横たわった吏紀を見る事しか出来ない。


そこに。


「千里さん?」


後ろから声をかけたのは、佐々木だった。


「…佐々木」

「どうしたんですか」


そう、言いながら俺に近付くと後ろからエレベーター内を覗き込む。
横たわる吏紀を見ると、佐々木は眉間に皺を寄せた。

それから、俺から離れてどこかに電話をかけていた。


「…はい、吏紀さんです。
…はい、はい」

話し方からして西園寺だろうか。


それから五分ともせずに西園寺がこの場にやって来た。
相変わらずの威圧感を纏って。


俺をチラっと見てから、すぐに佐々木に視線を移して西園寺は低い声を出す。

「…吏紀はどこだ」

「エレベーターの中です」


それを聞いて、西園寺はゆっくりと俺の方へと近付く。
俺の横をすり抜けて、エレベーターに入ると吏紀の前にしゃがみ込む。


「おい、吏紀」

顔を何度もペシペシと叩く。
吏紀の反応はない。
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