「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「佐々木、こいつ処分しておけ」
「は、はい!」
佐々木は慌ててまたどこかへ電話をかけに行った。
西園寺は立ち上がると、吏紀に一発、鳩尾に蹴りを入れてから俺に近付く。
横をすり抜ける時に、俺の肩をポンとしながら
「な。私の手から逃げる事なんて出来ない。
レンタル彼氏でいる以上。一生な」
そう、嘲笑う様に囁いた。
何も言えなかった。
ギリギリと拳を握りしめる。
西園寺はそのまま、エレベーターに乗り込んで降りて行く。
その場に俺と、吏紀が取り残された。
すぐに吏紀の元へと駆ける。
「吏紀、平気か」
近付いて、ゾッとした。
吏紀の足元には吏紀のモノと思われる髪の毛が散乱していた。
恐る恐る西園寺が掴んでいた箇所を目で追う。
その場所からごっそりと毛が抜けていて、肌が剥き出しになっていた。
「……ち、さ…」
「……吏紀!?」
か細い声が吏紀からする。
すぐに俺は吏紀を抱きあげた。
顔は腫れて、口から血は出て。
とてもじゃないが、見れたモノじゃない。