「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
その日から。
俺は失くしかけていた生きる気力を全て奪われた様で。
仕事中も。
いつでも。
笑う事がなくなっていった。
元々、笑わなかったけど…さらにだ。
飲めなかったお酒も飲むようになった。
毎夜。
あの日の事が夢に出てきて、お酒なしでは眠れなくなったからだ。
血だらけの吏紀が俺をいつまでも追いかけてくる。
そして、いつも俺を責めた。
どうして、助けてくれなかったんだ。と。
俺は非力だ。
無力だ。
何も出来ない。
聖ならどうしただろうか。
誰にも話す事も出来なくて。
一人の部屋で、俺は俺を責め続けた。
二週間程して、やっと落ち着きを取り戻した頃だった。
彼女と会った帰り。
寮の入口には聖が立っていた。
俺に気付いた聖は手を上げて笑顔を見せる。
「千里~、今帰り?」
「…ああ」
聖は小走りで俺の前まで駆けてきた。
目の前まで来ると、更に笑顔を向けた。