「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
でかい声を出してるわけではないが、聖の声には威圧感があった。
怒りも、寂しさも、悔しさも含まれているはずだ。

聖はきっと、二人を友達だと思っていただろうから。



「…俺が知ってるのは。
吏紀のいなくなった前日に、吏紀から伊織を助けてくれと頼まれた事ぐらいだ」

「伊織…を?」

「ああ。それしか知らない。
伊織に詳しく尋ねようと思ったら伊織が消えたんだ」


聖は少し黙った後、俺の顔を窺うように上目遣いで見て言った。


「本当?」


少し息を吐いてから、

「本当」

俺はそう告げた。


嘘はついていない。
真実も告げていないけど。


「…そっか。
辞めるなら一言欲しかったよね」

「ああ、そうだな」

「話してくれて、ありがと」


そう言って、やっと聖に笑顔が戻った。
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