「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「あれ、訂正するね」
「え?」
伊織は無表情のまま、ぽろぽろと言葉を落とした。
「……俺のが余程、レンタル彼氏にぴったりだよ」
「………」
「そう、思うでしょ?」
「わかんねえ」
「はは。だよね。ごめん、仕事でしょ?行ってらっしゃい」
「…ああ」
伊織はわざとらしい笑顔を見せて、俺に手を振って扉が閉まるのを見送る。
結局、俺は何も言えずにエレベーターに乗り込んだ。
“……俺のが余程、レンタル彼氏にぴったりだよ”
早夜と歩く伊織を見て。
確かに俺はそう、思った。
なあ。
誰もがこの仕事に向いていて、向いていないんじゃないか?
伊織が何に苦しんでいて、どんな過去があるのか。
俺は何も知らないし、知りたいとも思っていない。
だけど。
俺は伊織はこの仕事に向いていないと思った。
伊織も俺と同じ様に孤独を持ち合わせている様に思えた。