「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
簡単に着替えてから、俺はタッパを手に外へと出た。
白井さんの部屋の前まで来ると、インターホンを押す。

すぐに白井さんの明るい声が聞こえ、「千里です」と伝えるとパタパタとこちらに近寄る音が扉の奥から聞こえた。
がちゃりと音を立てて、扉が開く。

中から笑顔の白井さんが現れた。


「こんにちは、千里君」

「こんにちは。これ」


俺は手に持っていたタッパを差しだすと、

「まあまあ、わざわざ洗ってくれたの。ありがとうね」

と両手を合わせながら驚いて白井さんは受け取った。


「では、俺はこれで」


用は済んだし、長居は無用と思った俺はそう言う。
けど、それを白井さんが止めた。


「あ、千里君」

「はい?」

「…いえ、…味は大丈夫だったかしら?」

「…?はい、とても美味しかったです、ご馳走様でした」

「ならよかったわ。また作るからその時は食べて頂戴ね」

「ありがとうございます」

「それじゃ、呼びとめてごめんなさい、また」

「はい」


何か、腑に落ちなかったけど首を傾げながらも俺は白井さんの部屋を後にした。
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