「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「明日、朝はダメか?」
「…明日は昼から仕事があって…」
「そんな急ぎの用事なのか?」
「急ぎ…ってわけでもないんだけど、早く伝えたくて」
「はあ…。わかった、タクシーで来い。金は払うから」
「いや、私が払うよ」
「いいから」
「…わかった、ありがとう」
「ん」
電話を切った後、ベッドに体を放り投げる。
真剣な言い方だった愛海。
大事な用事なのは間違いないだろう。
でも、そんなんどうだっていい。
俺が愛海に何か出来ることなんて、ないのだから。
10分程してから、着いたと愛海から連絡があり、すぐに向かった俺は運転手にお金を支払った。
俯く愛海に軽く息をつきながら、声掛ける事無く俺はマンションへと戻る。
その後を慌てて愛海が追いかけて来た。
エレベーターに乗った後も、無言の愛海。
…珍しいな。
いつもならうるさいぐらい騒いでるのに。
部屋に入ると、後ろから小さく「お邪魔します」と愛海の声が聞こえた。
リビングで向かい合わせになって、やっと俺は愛海の顔を真正面から見た。