「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「……あ…」
口を開いた愛海を、俺はちらっと見る。
顔色はよくない。
だけど、俺が鋭い視線を和らげる事はない。
「会いたかったの…!」
「………は?」
思ってもない返事に耳を疑う。
だけど、愛海は更に続けた。
「会いたかった!お姉ちゃんの好きな人に。
見つけた瞬間に、好きになった。
好きになっちゃったんだよ!」
「………な…」
何だ、それ。
好きになっちゃったって…何だよ。
「本当に会ったのは偶然だった。
千里がどこにいるかなんて知らなかったし。
すぐに千里だってわかった。
私にもわかんないけど、わかったの」
「………」
「お姉ちゃんへの罪悪感と、だけど、どんどん好きになってく自分がいて。
千里を知れば知るほど、止められなくて…」
「…はは。
それで、俺にくるみと姉妹だからって打ち明けて何?
そうすれば俺が好きになるとでも思ったの?」
「ちがっ」
「違ってねえだろうがよ!」
目を見開いたまま、愛海は黙って俺を真っ直ぐ見る。