「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
静まり返ったこの部屋で、俺はぼーっとしながら天井を仰いでいた。
さっきから胸が苦しい。
くるみの笑顔ばかり浮かんでくる。
それに相反して、愛海の泣きそうな顔も。
こんな時に、いつも俺の側にいてくれたのは愛だ。
あの明るさに、俺は何度も救われた。
そんな愛も海外に出てて、いない。
他の女に会いに行く事も出来た。
けど、どうにもこうにも…体が動かない。
どのぐらいそうしていたのか、わからない。
気付いたら外が明るくなっていた。
女一人、危ないからってタクシーで来させたのに一人で帰らせる俺も、まあ酷いな。
「くくっ…ははは」
くるみ。
俺の事、見ているか?
そして、変わってしまった俺に絶望しているか?
簡単に俺は女を傷付ける男になったよ。
今ならくるみの前で愛海だって抱ける。
なあ、そんな最低な男になってしまったよ。
ここまでなってしまったのは、くるみだけの所為でないって…わかってるんだ。