「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
俺が見つめていたのは。

壁にかかったコルクボード。


たくさんの写真の中に。

くるみと、愛海と。
その間に写る男。


忘れもしない。

くるみと腕を組んでいた男。


「………」


ぼーっとそれを見つめていると、後ろからひょこっと顔を出した愛海が「ああ」と言いながら俺にその人物の正体を教えてくれた。



「お姉ちゃんと、お父さんと三人で撮ったのってそれ一枚しかなくてさ」

「…今、なんて?」

「え?それ一枚しかない…」

「違う!!その前!!この、男は…お、父さん…????」

「うん、お父さん」

「………まじ、か、よ」


ああ。
思考回路パンク寸前。
頭真っ白。


何?
くるみは…ただ、父親と会ってただけだったのか?


何だよ、そのオチ。
何だよ、それ。

言えよ。
お父さんと会うって。


言えよ。


頭が混乱して、何も考えられない。
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