「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「ち、さと?」
愛海は心配そうに俺の顔を覗きこむ。
「…バ、カみてえ、俺…」
愛海に返答するわけでなく、独白する。
それと同時にスゥーっと…俺の頬を涙が伝った。
どんだけ振りに泣いたのだろう。
もう、思い出せないぐらい昔の様な気がする。
「ええ!?な、どうしたの!?」
「…………」
俺の涙に愛海は心底驚いている。
俺自身、驚いているんだ、当たり前だ。
「た、タオル、ハンカチ、ティッシュ…」
「……落ち、着け」
「無理!落ち着けない!」
「………」
愛海は慌ただしく動くと、カバンからハンカチを取り出した後、テーブルからティッシュまで持ってきた。
どっちかでいい。
俺はどちらも受け取ることなく、自分の洋服で拭う。