「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
―――――…あれから。
俺と愛との関係に変化なんてなく、時間が過ぎた。
変わらず、俺は愛に養ってもらってたし、愛もそれでよしとしている。
会えば必ず体を交えるが、好きだ、愛してるなんて言葉は一切ない。
それに対して、お互いが何かを言う事はなかったし、それでいいと思っていた。
きっと、これから結婚をしなくても、ずっとこの関係でいるのだろう。
世間から見たら、こんな関係おかしいと思うだろうけど、俺達がいいと思ってるからいいんだ。
季節が廻り、肌寒くなって来た頃だった。
「千里君」
久々に髪でも切りに行こうかと、外に出た俺に声がかかる。
ニコニコと、優しい顔で微笑んでいる白井さんだった。
エントランスを掃除していた様で、手には箒とちりとり。
「お出かけ?」
「髪を切りに行こうかと」
「あら、切っちゃうの?素敵なのに」
「そうですかねえ」
「ええ、そうよ」
「じゃあ、毛先だけ揃える感じで」
「そうね、それがいいわ」
何度もうんうんと頷く白井さん。
掃除の邪魔しては悪いと思った俺は、それじゃあと言って早々にその場を去ろうとした。
そんな俺に白井さんもまた、笑顔で手を振ってくれる。
それから俺は美容室に行って、髪の毛を揃えるだけにした。
さっぱりした後、夕飯だけ定食屋で食べて帰路につく。
マンションが見えて、エントランスまで来た時に顔を上げると俺は目を見開いた。