「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
帰りの電車の中。
俺は受け取った通帳の自分の名前を眺めていた。
どれだけの金額が入ってるかわからない。
まだ確認していない。
だけど、きっと想像以上の金額だろう。
自分が死んだ後、あの旦那さんに渡して貰う様に託して。
俺の手に渡らないかなんて考えてもなかっただろう。
もしかしたら、俺の手に渡らなくたってよかったのかもしれない。
あの人は本当は凄く優しい人なんだろうな。
母親の再婚相手を思い出して、俺はそう思った。
母親を愛してるからこそ、辛い目に遭わせた俺を憎みたい。
でも、母親が俺を大事に思ってたから。
俺が母親に怒ってて、その気持ちはわかるだなんて。
俺とわかった時の驚いていた顔は、あんな理由からだったんだ。
本当は通帳だって受け取りたくなかった。
俺の金じゃない、そう言いたかった。
でも、あの人の前で最低なままの俺でいてあげたかった。
……このまま白井さんに会いに行こう。
きっと、白井さんは何か知っているのだろう。
だから、俺に何かと優しくしてくれていたのかもしれない。