「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
俺が病院に着いた時、既に辺りは薄暗くなっていた。
白井さんの病室まで真っ直ぐに歩く。


あのまま家に帰って、眠りに就きたい気持ちもあったがモヤモヤしたままでは気持ちよく眠れそうにない。
それなら、白井さんに会って話を聞いてすっきりしてから眠りたかった。


静かに白井さんのいる病室の扉を開ける。
他の患者さんもいる共同の部屋の一番奥が白井さんのベッド。

カーテンの奥から、白井さんが少し見えた。
白井さんは俺に気付くと、目を二、三度ぱちぱちとさせる。

それから、眉を下げた。


俺の顔から、色々悟ったのかもしれない。



「千里君」

「……」

「……行ったんだね」

「…はい」


白井さんは俯くと、一度息をつく。
それから「鈴原さんと知り合ったのはね」と、経緯を話し出した。
< 291 / 302 >

この作品をシェア

pagetop