「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「私がマンションの外を掃除をしている時だったわ。
千里君が帰ってきたのよ、ちょうど。
それからすぐに私に鈴原さんが声をかけて来たの」
「……」
「今のは、千里ですか?って。名字しかわからなかったし、名前なんて把握してなかったから誰の事かわからなくてね。
曖昧に笑ったら、千里をよろしくお願いしますって。
私の手を取りながら、何度も何度も頭を下げて来たわ」
「……」
「それから鈴原さんは一ヶ月に一回ぐらい千里君の様子を聞きに電話して来たりしてね。
余りに嬉しそうに聞くもんだから、私もつい千里君に話しかけたりしちゃったわ」
「……」
「何で千里君と会わないの?って尋ねたけど、私が悪いのしか言ってなかった。
どんな理由であろうと、千里君を自ら手放してしまったからって。
…千里君、鈴原さんは貴方を本当に愛していたわ」
「……はい」
「二人の間に何があったのかはわからないけど…鈴原さんにあの紙を託された時は、必ず渡そうと思った。
渡すのは千里がマンションを出て行く時って言われてたけど、ほら、渡せなくなりそうだったから…」
だから、このタイミングでごめんねって白井さんは申し訳なさそうに言った。
そんな事、全然ないのに。
黙ってる方も辛かったはずなのに。