「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「……おふくろは…俺の事なんて言ってましたか?」
「…そうねえ」
俺の問いに、白井さんは昔を思い出す様に目を細めながら遠くを見る。
それから、ふふっと笑って言った。
「私の自慢の息子って。
そう、何度も何度も耳にタコが出来るぐらい言ってたわ」
「………」
まじで、もう、言葉にならない。
勝手に裏切られたって。
そう、思ってたのは俺だけだったじゃないか。
くるみも、母親も。
しかも、もうその二人はいない。
俺が何かを伝える事は出来ない。
一生。
病院を後にした俺は、珍しく自分から愛に電話をかけた。
ぷるるっていうコール音が何度もする。
忙しいって言ってたから、出られないのかもしれない。
10回以上、コール音を聞いていた時に聞き慣れた声が通話口から聞こえた。
「もしもし!?千里?どした?珍しいじゃん、かけてくるなんて。
今、忙しくてごめ…」
「……愛、会いたい」
俺は愛の言葉を遮って、そう言った。
自分でも驚いた。
だけど、どうしようもなく愛に会いたかった。