「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
翌日。
時刻は既に昼。

俺は愛の声で目が覚めた。


「う、っわああああああああ」


そのどでかい声に目をぱちっと開けて何事かと愛を見る。
愛は携帯を見て、叫んでいたらしい。



「…どした?」

そう声をかけると

「千里、ごめん、話たくさん聞きたいんだけど仕事に行かないと」

「大変だな」

「まあね、今出ないと!クライアントに会う時間ギリギリ」


愛はバタバタと準備をしている。
その横で俺は愛をじっと見るだけ。

騒がしい愛を見ているのが楽しい。



「わー、間に合うかなー」

愛は腕時計を見ながら、カバンを持つと玄関で昨夜乱暴に脱ぎ捨てたヒールを足で器用に動かして履く。
もちろん、愛は昨日と同じ恰好なんかではない。

きちんと着替えを持ってくる。
どんな時も。




「行ってくる!」

「ああ」


ドアノブに手をかけてから、愛はぴたっと止まる。
それから、くるっと俺の方を振り返った。

ばちっと目が合うと、愛はニコっと笑って。


「千里、結婚式はハワイね!」


そう言って、俺の返事も待たずに玄関の扉を開けて出て行った。


「………」


呆気に取られる俺。
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