「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「いえ、財布はベッド脇の棚の中に…」

「………」


すぐに確認の為にベッド脇の棚を開けると、見慣れた財布があった。
鍵も一緒に。

携帯だけがねえってどういう事?


「千里さん…」

「あんだよ!」


イライラしながら、俺が佐々木に強く言うと佐々木はまたビクっとした。
あー。
こんないつもイライラしねえのに。

なんだっつーんだよ。

俺が何したっつーんだよ。


「…すみません、説明だけ…」

「後にしろよ!それに俺、やるだなんて一言も言ってねえよ!」

「…………」

「今は、何も考えらんねえ。だから、後にしてくれ」

「……わかりました。また来ます」

「……………わりぃ」


佐々木に当たる事じゃない。
そう、わかってんのに。

だけど、何がなんだかわかんねえ。


佐々木は広げたばかりの資料をまとめると、そそくさと部屋を出て行った。
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