「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
佐々木がいなくなった後の部屋は、シンと不気味なほど静まり返っていた。
クラクラする。
この現実が受け入れられなさ過ぎて。


ズキっと痛む首。
そこにあるガーゼを外す。

恐る恐る触ってみると何か、傷痕がある。

…切られた?
なんだ、この傷。


洗面所まで行って、鏡越しに見ようとするが首の真後ろで自分ではどう頑張っても見れない。
そう、頑張ってる自分が鏡に映って…その姿に嘲笑した。
あまりにも滑稽過ぎて。


…何やってんの、俺。


元はと言えば、あの男を少しでも信じて着いて行った俺が原因。
だから、誰も悪くない。
最初から胡散臭かった。

信じる必要などなかった。


なのに、どうして信じようと思ってしまったのだろう。

…きっと、金が欲しかったからだな。

悪魔だ、金ってのは。


俺はリビングに戻ると、一人では大きすぎるソファに身を沈めた。
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