「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
家に帰ったらわかるんだろ、きっと。
いい、今から家に行けばいいんだ。

別に寮だからって、必ず住まなきゃならないわけではない。
実家から通えばいいだけの話。

仕事すれば文句ねえだろ。


俺は財布と鍵と、“俺の”携帯を持つと寮と呼ばれているマンションを飛び出した。


寮はやはり、あの連れてこられたマンションだった。

全てが真新しい。
だから心機一転、ここから新しい人生を始めろってか?

馬鹿馬鹿しい。


俺の人生は俺のモンだ。
誰かに左右されるモンじゃねえ。


逸る気持ちが自然と進む足を速めた。
さっきから、不安が全身を包んでいる。

おふくろの顔を見ないと、何もかもが不安だ。


俺の両親は幼い頃に離婚していて、ずっとおふくろは女手一つで育ててくれた。
だから、苦労をかけた分親孝行したいと思っていたんだ。


なのに。
なのに…。

頭をぶんぶんと振ると、俺は顔を上げる。

そこには見慣れた俺の住んでいるアパート。


築何十年だよって感じだけど、不便はしていない。
決して綺麗ではないけど、住めればよかった。

元夫から養育費の類は一切貰っていない。
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