「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「………何で」


絶望にかられた時って、怒りすら忘れてしまうらしい。
俺はペタンと、膝から滑り落ちるようにしゃがんでは何もない部屋を見つめた。


本当に昔から慣れ親しんだ、この部屋。
離婚してから、ずっとここに住んでいる。

おふくろと過ごした、思い出が詰まっている部屋。


俺が幼い頃、シールをたくさん貼って怒られて。
その跡が残っているドアとか。

俺が小学校の頃、取った賞状とか額縁に入れて飾ってて。
その形に日焼けしている壁とか。


おふくろだけでなく。
俺の思い出、全てが一気に消え去った。



昨日、西園寺に話を聞きに行かなければ。
俺は何事もなく、ここにいて、おふくろと笑っていたのかもしれないのに。
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