「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
その時、カチャリと扉の開く音がした。
だけど、俺に振り向く気力なんてない。


もう、誰でもいい。

カツカツと小気味よく足音を立てて、俺に一歩一歩近付く。
その音がぴたりと止まる。


「お前の母親はな」


そう声がして、俺は勢いよく顔を上げた。


そこにいたのは、あの、西園寺だったからだ。


「てめえ!!!」


ガバっと起き上がると、俺は勢いよく西園寺に掴みかかった。
胸倉を掴むが、西園寺はぴくりともしない。
…寧ろ、薄ら笑いを浮かべている。


「おふくろをどこにやった!!」

「そう、興奮するな」

「はあ!?」

「今から説明してやるから、手を離せ」

「~~~!!!」


俺は乱暴に掴んでいた手を離すと、ソファにどしんと勢いよく座った。
そんな俺を見て、一度乱れたネクタイとシャツを整えてから西園寺は話し出す。


「お前の母親は金でお前を売ったんだよ」

「…………は?」


よく、西園寺の言葉が聞き取れなかった。
誰が、誰を売ったって?
意味がわかんねえ。
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