「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
途端に色褪せて見えるこの、ファッションビル。
皆カップル同士、家族で来ているのに。

俺は独り。


帰ろう。
今日の夕飯を買って。


賑わうファッションビルを後にすると、俺は近くのコンビニで弁当とお茶を買って出る。
それから、帰路についた。


暫く歩いてから、気付く。
今日、白井さんが煮物とか何とか言ってたな。


思い切り弁当買っちまった。
まあ…いいか、明日食えば。

マンションまで着くと、自分の家に帰る前に白井さんの部屋へ訪れた。


ピンポンと、一度インターホンを鳴らす。
すぐに白井さんの声がして、扉が開いた。


「あら、千里君」

「どうも」

「こんばんは、あっ、そうそう。千里君、魚好き?」

「魚、ですか」

「たくさんいただいちゃってねえ。でも、食べきれなさそうで。
煮つけにでもしようかなと思ってるんだけど」

「いいですね、煮つけ」

「そう?よかった。今日はもうどこも出かけない?」

「あー…そうですね」

「じゃあ、後で持っていくわ」

「…いつも、すみません」

「何、言ってるの。いいのよ、私も助かってるんだから」
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